多細胞生物の死を乗り越える基本戦略とは、長寿ではありません。それは生殖という方法なのです。生命の本質とは何でしょう。いろいろと考えられますが、「つながる」という事も生命の本質的な性格だと考えられます。次へと命を紡ぐというのが、生命を支配する第一の掟と言えるでしょう。
命を絶やさないという最も素直な戦略は、単細胞生物のそれです。自らの不死性、自らは不死性を維持しながらも同時にコピーを増やします。これにより、自分系譜が途絶える危険性をずっと小さくできるでしょう。ところが、多細胞生物の大半はその単純を放棄しました。全能性幹細胞によって不死性を保持したプラナリアのような多細胞生物はあくまで例外的な存在でしょう。
その代わり、ほとんどの多細胞生物が選び採った戦略は、生殖細胞の厚遇でした。生殖細胞のみを徹底的に優遇し、他の体細胞は使い捨てにしても、生殖細胞によって系譜をつなげていく。これが多細胞生物の基本的戦略なのです。